電荷発生装置とは?
国内医療機関のリニアックのモニター線量計校正用の電離箱と電位計の校正については、これまで医用原子力技術研究振興財団において電離箱と電位計の組み合わせを決めて実施される一体校正が行われてきました。2018年度から電離箱と電位計を別々に校正する「分離校正」が始まり、2023年4月より一体校正の取扱いを廃止し、分離校正での提供へ完全移行しました。
この分離校正では電位計に「電位計校正定数kelec」が付与されるようになり、3年毎の校正が推奨されています。そのため3年間に亘りkelecが変化していないか日常的に確認しておくことが重要で、この確認に用いるための装置が本機の電荷発生装置です。
RT521R2型2チャンネル電位計とRT521R型1チャンネル電位計には電荷発生装置を本体内に搭載できます。この電荷発生装置には出力電流[pA]と出力電荷[nC]を正確かつ安定に出力できる性能が求められるため、本機では校正機関が校正で使用している装置と同レベルの高い精度と安定性を実現しました。これに加え本機では出力電流[pA]と出力時間[sec]を設定し、それらの積を電荷[nC]として設定する方式を採用しています。この方式は実際の使用状態に近い状態で点検できるメリットがあります。
■他の電位計も点検できます
専用ケーブルの反対側の端子を電位計のDetector端子へ接続すると自分自身 の測定精度を点検することができます。同様に他の電位計へ接続してその電位計の測定精度を点検することもできます。さらにリニアック室と操作室の間に敷設された延長ケーブルの健全性を点検することも可能で、電荷発生装置は放射線治療部門における有効なQAツールとなります。
RT521R2型電位計の電荷発生装置をRT521R型へ接続した例
■出力は極めて安定
電荷出力の揺らぎの実測結果を右に示します。RT521R型電位計のDetector端子と電荷発生装置のOutput1とを付属の専用ケーブルで接続し+19.8 pAと+198 pAと+1980 pAを50秒間、つまり+0.99 nCと+9.9 nCと+99 nCを出力し、それを10回繰り返し測定した結果になります。相対標準偏差は0.00883%、0.00078%、0.00019%でした。この測定結果は電荷発生装置とRT521R型電位計の両方の揺らぎが含まれますが、電荷発生装置の出力は極めて安定しています。電荷発生装置にも電位計と同様の自動温度補償を採用したことで暖機の途中でも安定に出力できます。
電流制御方式 | 出力電流をフィードバック制御するアクティブ方式 | ||
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出力電流波形 | 直流 | ||
出力設定方式 | 出力時間と出力電流を設定するとそれらの積で出力電荷が設定される方式 | ||
出力時間設定範囲 | 0.1秒〜1000.0秒 | ||
出力電流設定範囲 | Output1 | 0.000 pA〜±2000.000 pA(設定が可能な分解能は0.005 pA) | |
Output2 | 0.00 pA〜±20000.00 pA(設定が可能な分解能は0.05 pA) | ||
出力電流有効範囲 | Output1 | ±20 pA(最小定格電流)〜±2000 pA(最大定格電流) | |
Output2 | ±200 pA(最小定格電流)〜±20000 pA(最大定格電流) | ||
出力電荷表示範囲 | ― | RT521R型 1チャンネル電位 | RT521R2型 2チャンネル電位計 |
Output1 | 0.00000 nC〜±2000.00000 nC | 0.00000 nC〜±2000.00000 nC | |
Output2 | 0.0000 nC〜±20000.0000 nC | 0.0000 nC〜±20000.0000 nC | |
ゼロ点ドリフト | 最小定格電流に対し±0.1%以内 | ||
ゼロ点ドリフトの温度係数 | 最小定格電流に対し±0.015%/℃以内 | ||
出力電流の温度係数 | 最大定格電流の1/2を出力時に±0.0025%/℃以内 | ||
出力電流の非直線性 | 最大定格電流の1/2を基準に全有効範囲で±0.1%以内 | ||
出力電荷の時間非直線性 | 最大定格電流の1/2を出力時に10秒を基準に1〜100秒で±0.01%以内 | ||
出力時間の精度 | 50 ppm以内 | ||
出力電荷の不確かさ (k=2・納入後1年以内) |
Output1 | 出力時間50秒で±1 nC〜±100 nCにおいて0.29%以内 | |
Output2 | 出力時間50秒で±10 nC〜±1000 nCにおいて0.20%以内 | ||
長期安定性 | ±0.1%/年以内 | ||
安定化時間 | 起動後1時間経過時を基準として、15分経過時と6時間経過時の最大定格電流の1/2の出力の差が±0.02%以内 | ||
繰り返し性 | 最小定格電流を50秒出力させて電荷測定を10回繰り返した場合の相対標準偏差が0.01%以内 | ||
専用接続ケーブル | 三重同軸BNCコネクタ付き電離箱用延長ケーブル3 m長(付属品) | ||
使用時の環境 | 気温20~30 ℃ 湿度 10~80% (結露が無い事) 暖機時間 15分以上 | ||
製品の形態 | RT521R 型または RT521R2 型電位計の内部に搭載されます。 |
(2023年6月30日更新)